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明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

ぱちぱち男爵てつお&モモグラモ

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★久々のイギリスでのホリデー、地元でまったりしました。パブにスタバ持ち込む自由なぱちぱち男爵。

毎年家族や友人に送るカードで「あけました」をやらかしてしまう夫、今年は時間がなく私が書いたので起こりえないだろうとほっとしていたら、TWITTERでやっちまった。

「あけましたおめでとうございます!」

ひっくり返った2015年のスタートである。

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★イギリス帰ったらすっかり冬でした。

前回はなんだか、私の面白くない話をうだうだと書いてしまったので、日本での貴重な体験と平行して帰ってきてからのイギリスの日常もお届けしていこうかと思う。

まずヒースローに迎えにきた夫を見て、2ヶ月ぶりに思ったこと、

なんか、やせてないか?いや、引き締まってるのか?

なんせ、高校生のときに買ったサーフパンツをいまだに部屋着で穿いている夫なのだ。
元々痩せ型で、あまり変化に乏しい彼が一番ぷくうとしたのは、3年前に二人で長めに日本に滞在して、「ぎゅうどんは朝ごはんです。」、「おうどんはおやつですから!」、「はーーーなんでいつも日本にいるとおなかがすくんですか、もっかい肉まん食べていいですか。」、「いまのはカウントしないでください、おやつですから、3食まだ食べてません。」

などといいながら、更にポッキーやらミスタードーナッツやらをむさぼっていたあの時期であろう。

それでも、イギリスに帰ってきてからはまた「しゅう」と痩せた。

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★日本のお友だちからもらったお菓子が美味しすぎます。嬉しすぎます。

その夫が、なんだか空港で更にやつれて別人のように見えたのである。おったまげた。

そういえば、わたしが日本にいる間、ちゃんと食べているかと聞くと、

「はい、ブロッコリーたべました。おいしかた、」

などと返事が来たので、お野菜ちゃんと取れてえらいじゃないか!と感心してはいたのだ。それが、次の日に、

「何を食べた?」、と聞くと、

「ブロッコリーたべました。おいしかた。」

更にそのまた次の日に、

「ブロッコリー、おいしかたよ。」


彼がブロッコリーをすきなのは知っていたが、そこまで執着していたか?とふと不安になり、

「では他に何を食べたの?」と聞くと、

「なにも。ブロッコリーだけ。」

ひえーーー、思わず電話を片手にひっくり返った。

「パンは?お米は?パスタは?!!!」

「たべてないですよ、おうどんはたまに食べます、すてきねー。」

「たまにじゃなくていい、この際心配だから全部食べてもいいから、しっかり食べなさい!」

「しっかりブロッコリー食べてます。」

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★が私はイギリスに帰り病気しましたが、看病中のご飯もブロッコリー山盛りでした。

私がイギリスに来たとき、夫の家族や友人があまりに食事に無頓着なのにびっくりした記憶がある。
私は少しずつ色々な種類のものをいただくのが好きだし、日本人として当たり前だと思っていたので、夫がソーセージにゆでた芋、缶詰から出して温めただけの出来合いのBAKED BEANSをディナープレートに盛り、冷凍グリーンピースをでんとおいて、やはりディナープレートにそれをみなでとりわけ、グレービーをかけたり、塩コショウも各自で、今思えば個人を尊重する文化ならではかと思うが、当時は分け合うことがない食事が味気なく悲しかった。

義理の弟のフラットに遊びに行ったときは、夕食というより、「ソーセージと芋」だけしかなかった。

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★うちご飯も在英8年目で、だんだん似てきたけどね。

私の友人のロンドナーは、パブで延々と飲み、(つまみなし)おなかがすくとマックに飛び込んで、またパブに戻ってきては飲むのである。

それが嫌でいやで、私はお酒が好きだからつまみなしで飲む事にも慣れずに、もういっそのことお酒も飲まないでいいと最初の1年は食に関しては魂が抜けてしまうほどに何も感じなくなった。

元々家族、特にばあさんが食通だったので、正月にはこのわたにこのしろで日本酒をちびちびやり、小さなころからマグロを買いに魚市場までついていき、季節になればせいこ蟹おっかけ北陸へ。

お肉はみすじじゃなきゃとわがままなばあさんのおかげでいっぱい勉強させてもらった私、1年目のイギリスは本当に苦しかった。

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★今は顔ほどでかいフィッシュ&チップスや、近所のカフェのかわりばえない朝食、全く流行らないケーキ屋の恐ろしいディスプレイにもなれました。いや、美味しく感じます。さらば、私の日本舌。

どうしても我慢できないと、中近東料理、レバノンやトルコ料理などはMEZZAという前菜の種類もおおくて野菜もたっぷり、お豆もたっぷりなので、メインをシェアして前菜をいっぱい頼んで居酒屋気分で発散したが、友達もまったくいなかったし、夫は見たことがないものに手をつけるタイプではなかったので、二人で行ってもちっとも盛り上がらずに余計にストレス。

中華などもあるが、とにかく量が多いので残すことが嫌いな私には苦しくて無理だった。

そんなことを、夫の「ブロッコリーたべました。」を聞きながら、ふと思い出していた私。

今でこそ、「おにくのおばあさん」や、家族友人のおかげで納豆にモツ煮、御節(ことしは男爵オリジナルを作った、またご紹介したい)、銀杏、おでんも大好きな彼だが、少しほうっておくと本当に「ミスターブロッコリー」、やはり食への関心は日本人とはやはりぜんぜん違うのだ。

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★私たちの住む街です。ウィンブルドンの会場にも歩けます。安パブとかあります。

さて、二ヶ月ぶりにイギリスに帰り、空港から家についてその日は夫が夕食を作ったのだが、私の大好きなラム肉のステーキ、それにマッシュルームのソテー、そしてやっぱり、出た、

ブロッコリー。

今日もこんにちはブロッコリー。

もう、もう、今日くらいはいいのでは。

しかし、そのディナーの席で、

「もちんが帰ってきたから、一緒にサンデーのちょっとご馳走な食習慣を一緒に共有したい、付き合ってちょう。」

そういっていたので、いいや、ブロッコリーでもいい、日曜日は素敵な一日を送れるっぽいからとわくわくしていたら、


日曜日、まずは朝たたき起こされ、

「まず、朝はジムにいきます。」

ほほう、まあいいや、時差ぼけで辛いが健康的だからいく。

「そして、卵を2個食べます。それにスモークサーモンを食べます。」

スクランブルエッグがなんかかと期待したが、ゆで卵に、サーモン。あ、あれ。

「夜はうどん、おわりです。ゆじこしょ、いれます、おいしいねー、」

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★なんか、こう、マーケット巡りとかしませんか?


私は「どこかのカフェでブランチして、一緒に買い物にいって・・・・。」などと、そういうことを期待していたのだが、彼の新たな大事な習慣は、

「卵2個にスモークサーモン」、「夜はうどんゆず胡椒入り」

すごい、すごい涙が出るくらい豪華。うん、たぶん。

なんでも私がいなくて、暇で暇で、ブロッコリー食べてはジムに行ってばかりだったらしい。

仙人にでもなるつもりだったのだろうか。


話はガラッと変わるが、私が日本にいる間にゴードンのおばあちゃんが亡くなった。
まだ60歳代だったのだ。すごくお元気で、一度南アでお会いしたときには、

「がはははは、なんとなく、こんなかんじじゃない?」と、ウィスキーをぐわっとグラスについで、

「これ、シングル。」と、絶対にそうは見えない量を一気に飲み干して、「孫が帰ってきた!嬉しいなあ。」と笑っていらっしゃったのを覚えている。

おばあちゃんといっても、ゴードンの母のミシェルは小さなころ本当のお母さんを亡くしているのだから、ミシェルのお父さんのスチュワートが後に再婚した方であった。それでも、ゴードンが生まれる前にすべて起こった出来事であったので、ゴードンにとっては本当のおばあちゃんとなんら代わりのない、大切な存在だった。

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★思いでのgem squashも、今日は涙が出て味がわかりません。

ミシェルがゴードンを身ごもったとき、「いやだわ!わたしはこんな若くしてバーさんになりたくないわ!」と、猛反対していたのに、夫が生まれて真っ先に病院にばたばたと駆けつけて「なんてゴージャスな子なの!」とでれでれしていたのも祖母、リンだった。

「階段から落ちたんだ、脳出血して、そのまま意識がない。」

沈んだ声で言っていた夫、その数日後におばあちゃんはあっけなく天国に召されてしまった。

おじいちゃんであるスチュワートがなくなったときも、リンがなくなったときも、南アへは帰れなかった。頼る人がいなければ、あの国では車もなしにどうすることもできないのだ。

ちなみに、ミシェルの実の母親はミシェルの目の前で銃で撃たれてなくなった。

私は沈んだ夫の声を聞きながら、もう夜だというのに学生さんがスカートで自転車にのり家路を急ぐ光景や、明るいコンビニの前で話しながら笑う方たち、会食のあとなのだろうか、お子さんの手を引っ張りながらとても綺麗なエレガントな服を着て、品の良いバッグを下げながら、お子さんと歌を歌いながら道を行かれる方たちを、遠くイギリスからも南アからも離れた日本のフラットのベランダから眺めていた。

「もう、みんないなくなりました。わたし、おじいさん、おばあさん、日本のおじいさんも、だいすきな日本のおじさんおばさんも、みんなみんないなくなりました。」

すすり泣くように電話の向こうで夫がそうつぶやいた、その話を日本の最後のボスで生き残りである祖母にしたら、

「なにいっとんじゃ!まだお肉のおばあさんがいると、早く会いに来いとゴードンにいっておけ!」

というので、「おばあさんがこういっていました。」とLINEをその後送ったら、

いっぱいのいっぱいの泣き顔のスタンプとともに、

「優しい。」

と、一言返ってきた。

17歳でアフリカを出て大好きなじいちゃんばあちゃんのお葬式にも、お墓参りにもいくことができず、イギリスでどんなに辛く悲しかっただろう。

「日本があるからね、イギリスの生活が辛いと最近言うけれど、ゴードンの家はここだけじゃない、私たちが住むとこ、いっしょにいるとこ、全部、私たちの家なんだ。それに、日本は故郷だよ。ゴードンと私の故郷、君を待っている人も、温かく迎えてくれる人も日本にはまだいっぱいいる、一人じゃないよ。」

そう返事をしたら、どでかいスライムが3段になってわんわん泣いているスタンプが帰ってきた。

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色々生きてりゃあるが、「優しい。」そう書かれたLINEのメッセージをながめながら、私もあることを思い出していた。

前回のブログで書いたように日本に2ヶ月逃げ帰った間、大好きな長野を旅した。
たちよった奈良井宿の駅で私がイギリスから一時帰国していること、長野が大好きで義父が生まれ育った大事な場所だとつらつら話しているうちになぜか、本当に突然涙が込み上げてきて止まらなくなった。

父よりずっとご年配であろう優しい目の駅員さんは、そんなわたしに戸惑っただろうか奥に引っ込んでしまった。申し訳なかったと思っていると、

「お召し上がりください、よかったら。」

顔をあげると、駅員さんの笑顔、手にはきちんと手拭きが添えられた可愛い一房のぶどうが。

「塩尻でとれたばかりのぶどうです、とても美味しい。ゆっくりすわって、あったまって、食べていきなさい。長野によく来てくださいました。ゆっくり、ゆっくりしていってください。」

私は止まらない涙を押さえられず、小さく風情のある待合室でそっとブドウをつまんだ。口一杯に香り高い、優しい甘味が広がった。

私には帰る場所がある、夫にはどうだろう、私は日本で彼を放りっぱなしで何をしているのだ。

早く彼におかえりと言ってあげなければ。

2ヶ月日本にいる間、こうした人々の温かさ、思いやりの度にわたしの心は癒されて、暗闇のトンネルを少しずつ「ほら、明るいところに来なさい」と、本当に一杯の手に引っ張られながら抜けていった。

そして今、わたしはイギリスにいる。平和で何てことない毎日だが、穏やかだ。

夫には帰る場所が又戻ってきた。私と、日本。
今わたしの横には安心して穏やかに笑う夫がいる。

日本のみんな、本当にいつもありがとう。

ゴードン、今度は一緒に帰ろうね。




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雪に喜ぶ南ア人。

2013/05/07 Tue 23:01

とってもとってもご無沙汰しているその原因、コンピューターがフライトで壊れたのだが、その後に買ったコンピューターまでも数週間で故障するなんて、

私何か怪しい電波が出ているのだろうか。

いっぱい日本の帰国の思い出をお届けしたいのに、写真もアップできないままぱちぱち男爵のPCをかりているのだが、「もちんが触ると壊れるからいやだぞう」

皆様ごめんなさい、後数日で修理に出したPCが返ってくるはず、返ってきてください、そしたらブログをアップしますので、それまでこの動画などでもよろしければお楽しみください。

犬か?と突っ込みたくなるはず。

「雪に喜ぶ南ア人。」※YOUTUBEにリンクしています。


☆おかさんがくれた日本のふわふわ毛布が大好きです。




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私も泣いた。

2012/10/19 Fri 22:46

私も人間だから、落ち込んだり、劣等感にさいなまされる日々もある。
ここ数ヶ月、本当に「いやだあああ!」と言うほど落ち込んだ。

まず、私の命の次に大事なパスポート、ビザもついている私のパスポート、これが事情により「びっりびり」に破れた。

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★びっくりしすぎて思わずのぼりますた。


そういうわけで、わたしはとてもとても落ち込んでいて、近所の徒歩3分圏内のショップにミルクを買いに行くのも「いやだ」、たまった洗濯物を干すのも「いやだ」で、ゴードンに多大なる負担をかけているのだが、


いいの。人間だもん、そういう時あるに!


ゴードンも私のストレスを分かっているようで、「ごはん わ わたし つくります しんぱい ない」、「わたし じぶん つくる できる」と凄く協力的なのだけれど。

とある日曜日の朝、なんだか懐かしい「ぷーん」という柔らかでまろまろな出汁の香りで目が覚めた。

お母さんやおばあちゃんが作ってくれたきしめんの、かつお出汁の香り・・・・・・

そうまどろんでいたが、


はああっ!!!!

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★わかってますたよ、わかってますたあああ!「だってあまいものとうどんがすき」

「かつお出汁」、「きしめん」、「まろののり」、「ゆずこしょう」

あああああ!

慌ててガウンを羽織って階下に降りたが、そこには嬉しそうに、私の「きしめん」、最後の「きしめん」、しつこくも「最後の・きしめん(愛知県地元産)」をほうばる夫がいた。

「きしめんは増えますね。おなか一杯です!」

あほ!

「こんなに のびのびです まろー」

うっとりとした顔の夫、

私「せ、せめてお汁だけでも」

夫「そうなんです、いいおあじ でてますよ。食べて食べて。」

あんたは何人だ!


「わたしのきしめん・・・麺は どこですか・・・」

脱力して聞くと、「もちんは寝てました おそすぎます、いらん。」、と。

魂抜けた私の前で、「うわーすげいよー ボニートフレーク(鰹節)うごくうごく めらめら!」と、
鰹節に興奮する彼、お前は名古屋に帰れ!!!

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★白鳥もびっくりです。


そういえば日本に帰国するたびに、本当に「ゴードンをロンドンにおいてきたらよかった」と後悔するのだ。

たとえば、わたしのおかん

イギリスでは新鮮な魚がなかなか手に入らない。刺身に飢えている。寿司が食べたい。

はるばる(お金がないので)経由便で18時間ほど、ヘルシンキやらパリやら、アムステルダムに時にはイスタンブールなどを経由、ようやくおかんの顔を見て、「おかえり、何が食べたい?」という温かな母の顔に「じーん」

私は何でもありがたく頂戴する性格なので出された機内食はぺろっと平らげるが、ゴードンは「いやだ、にほんのごはんがたべたいんです、へんなごはん いりません、まてます!」と頑なに機内食を拒む有様。

そのせいでフライトの後などは顔面蒼白、どうみても倒れそう。目の下には筋が入って、なんだか魂抜けてるし。

そこで、おかん。

「寿司、寿司、すし!!刺身!」と大騒ぎする私。

なのに、ゴードンは隣で「う、うどん、うどん、うどん、おかしゃん、うどん!」と一緒に頑張るのだ。

しかも、何度も言うが、夫の方がずっと倒れそう。あ、本当に倒れるかも。

やめれ、まじでやめてくれ。

心優しい母は、たらふく機内食を食べた私と、倒れそうな彼を見比べて、

「なら、うどんにしようか。」


おおおおおおおおおお!!!!いやだ、い・や・だ!!!

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★夜中にすがきやラーメンとか、やめてほしい。

いつも完全なる敗北。


君は散々、ロンドンで、私のうどん(きしめん)を食べつつ、

「ゆず胡椒は人類が発明した一番の薬味だ!!!」といいながら、わ、わたしのゆず胡椒、も散々たべてるもん。

1・ご飯にかける

2.芋にかける

3.うどんに入れる

4.肉につける

5.魚に添える


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★おかげで今まで1ヶ月に2本必要だったNANDOSのソースが全く減らない。


さて、話は戻るが、お話したとおり私は今年の5月に事情によりパスポートをびりびりに破損してしまった。

真っ青になり日本大使館に駆け込んだが、なんと彼らは、書類がそろい次第たったの5日で新しいパスポートを発行してくださった。

神業である。

神業!!!



しかも本当に親身になって、今後の対策などを教えてくださった。安心のあまりそして優しい日本語にその場でありがたくて腰が抜けそうなくらいになったものである。

「古いパスポートについているビザは、破損がないのでなんとも申し上げられませんが、担当によって何があるか分からないので、やっぱり新しいパスポートに移行されるのが確実です。どうぞ手続きされることをお勧めします。」

この国に私が滞在するためには、EEA ファミリーのメンバーであるという滞在許可のビザがいるのだ。思えば、そのビザを4年前に発行した際の悪夢、なんせ1年近くも申請してから発行されるまで時間がかかったため、その間パスポートはないわ、日本には帰れないわ、本当に不安だった。

「もうすぐ、もうすぐ、絶対にもうすぐ。」そういいながら1年近く待った。パスポートが帰ってきて、そのページに無事にビザを見た時は、安堵のあまり泣き崩れてしまったほどだ。

日本大使館のパスポート5日で発行、イギリス私のビザ1年、ありがとう。

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★日本の家族にもお友達にもいっぱいたすけてもらいますた。


さて、その命の次に大事なビザ、新しいものに移行しようと夫と書類をかき集めた。

そして、何度もホームオフィスに電話をした。なぜなら対応する人によって言うことが違うので、3,4度は確認しつつ、万全に書類を備えて送ったのが5ヶ月前。

またパスポートがない暮らし。予定をしていた2度の国外でのホリデーも全部キャンセルし、「移行だけだから、すぐに戻ってくる、戻ってくる。」と、また自分に言い聞かせる毎日。

何も音沙汰なしの5ヶ月。いやいや、まだまだ我慢。

さて、5ヶ月たったある日、夫は「さすがに12月までには戻ってくるに決まっているから!」と、日本への一時帰国チケットを「ぽち」っとしたのだ。

嬉しかった。本当にうれしかった。嬉しさのあまり何度も何度もフライトの詳細を「でれー」と眺めていた。

その次の日、まさに次の日。

「ばさっ、べりっ」そういう嫌な音と共に、郵便受けから何かが落ちた。

雨でべたべたになったその封筒は、無理やり郵便受けに突っ込まれたものだから半分破れていた。

あまりの惨状に、「どうせジャンクメールだろう」と手にとって、口をあんぐり開けてしまった。

パスポート、帰ってきた。それも雨ににじんで帰ってきた。


「いやだ!」
そのダメージを気にして、しかし、帰ってきたことに安堵しながらビザの移行されたページを確かめようと、慌てて新しいパスポートを確認したが、


「ない、ない?」

真っ白なのだ。新しいパスポートにはビザは移行されておらず、私は大いに焦った。
そして見つけた。

「書類不足で申請は却下。」

そうかかれた同封されたホームオフィスからの手紙。もうこの時点で頭は真っ白だった。

あれだけ確認したのに。悔しい、やるせない!

なんだか自分が本気で歓迎されていない気もして、色々なことでダウンしていた私は、言葉を失うほど落ち込んでしまった。
会いたい家族も友人も日本にも大勢いる、スーパー銭湯に入って、ぼけーとしたい。助けて、どうして、私はここで一体何をしているんだろう。

ビザが移行されていないということで、日本から帰る英国入国の時、もしかして「入国拒否」とかスタンプ押されちゃうんだろうか。

いつも散々冷たくあしらわれる英国のイミグレーションで、経緯を説明して、それで本当に入国できるのだろうか。

人によって言うことが違う、ホームオフィスの誰もあてにできない、もういやだ。

一瞬そんな思いすらよぎってしまった。

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★秋のヨーロッパはちょっとさみしですよ。

夫に気力なくメールをしたが、その返事をみる元気すらなくベッドに横になってじとーと過ごした。
以前調べた情報によれば、「古いビザが無事なら、2冊持ち歩けば大丈夫。」という人もいれば、「移行していなかったら入国拒否にあった。」という人もいて、もう何がなんだか、考えるのも嫌だった。

更には「面白くないイギリス入国拒否の話。」ウェブページなども発見してしまい、とある人が「7年間会っていない妹に会いたいから。」と英国への入国審査官吏員に告げたところ、「そんな長い間あっていないなら、会わないでもいいから。」と入国拒否されたとか。ええええ。

5ヶ月待ってこれ。しかも今から申請しても間に合わないし、日本のチケットは予約したし。

なんだかイギリスに悪態をつきたくなった。

もう、日本に帰りたい。まじで帰りたい。5年目にして本気でそう思った。



そのうち夕方になり、「おかえり!」といつもの通り、元気な夫がびゅんっと帰ってきた。

じとーーーとしている私を見ると、

「もちん!きょうの ごはんわ わたし つくります。」

と、力強い声。

「またうどん食べちゃうんでしょう?私のきしめん、わたし、日本に帰りたいよ!」

思わず声を荒げる私に、にゅうっと差し出されたのは、

私の大好きなあたりやさんの御寿司。

「まだまだあります。」

そしてワンカップ。

「これもかたですよ!」

日系のお店の大福。

「もちん、だいじょぶ!わたし、今日はホームオフィスに9回も電話しました。みんな、おなじこといいました。ビザが無事だったら、入国できます。はい、だいじょぶ、日本にかえりますよ!」

そこで私は我に帰った。

「えっ、あの中々つながらないホームオフィスに半日で9回も?!うそ!」

すると夫は、笑いながらこういったのだ。

「わたしの 同僚と おともだち、みんな もちんが だいすきです。みんなで 一緒に でんわ しました。みんな 何度も かけました。ボスも かけました。 大丈夫 です、わたしたち、日本 かえります!」

「えっ・・・。」

「だいじょぶです!みんな もちんが だいすき おてつだい いります!ぜったいに ぜったいに だいじょうぶ、みんな やさしの ひと、おてつだい します!」

底で私は思わず、年甲斐もなく「うわーーん」とおお泣きしてしまったのだ。

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★忘れてしまうものですね。

なんてアホなんだろう、私は。
私のビザの事なのに、人にこんなに助けてもらって、夫に全て任せて怠けていたのに、結果に落ち込んだり文句を言ったり、「もちんのことだけじゃありません、私たちの ことです。」と言ってくれる夫、彼だって凄く辛かったに違いないのだ。

「ごめんなさい、わたしがいじんです、わたしと結婚しました、だからまいにち たいへんです、このストレスは、はい、もちんは日本にすんでたら いりませんでした。、ごめんなさい。かわいそです、わたし こころ いたいです。」

そういう夫はなんだか涙ぐんでいるようだった。


そうなのだ。いつもこうなのだ。私は自分ばかりが大変だと勝手にぶーぶー文句をたれて、落ち込んで、そのくせ「何が出来るか」と考えることもなく、お尻がとても重くて。

そして、周りの温かな強い人たちに助けられて、その無言の教えに、「はっ」とする。
彼らも大変なことをいつも抱えているのだ。私だけではない。

私はゴードンと結婚したとき、自分が国際結婚をするなどと思ったこともなかった。ゴードンという人と結婚をして、彼が南ア人だった、それだけであった。

それに、イギリスにくると決めたのも私自身であった。彼との結婚を決めたのも私自身、誰の判断でもないのだ。

ビザの問題だけでなく、いわゆる「国際結婚」らしきものには、色々な障害もあった。それでも、ゴードンの「だいじょぶ!」力強い、またユーモアあふれるやり方で、がんがん潜り抜けてきたのだ。その間に私は、めそめそして、いったい彼はどれだけ私の分頑張ってきたことだろう。


「わたしもおともだちもみんなも、あしたもあさっても、ホームオフィスにでんわしますよ!ぜったいに、日本にかえれます!しんぱいしない!ボスも おてつだい します、かれ こわいの ひとです、ホームオフィスに かんかん 怒る いいました。だいじょうぶ です。」

ニコニコそう笑う彼に、私は心の中で手を合わせた。彼の友人にも、同僚にも、かんかん怒るといってくれたボスにも、私の家族にも、友人にも、みんなに手を合わせた。ありがとう、本当にありがとう、私も頑張る!


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★甘いものがあれば幸せ、そういうあなたにわたしもなりたい。

「むしろ入国拒否されたら、もちんは喜んでばいばーいしますよ。毎日おうどん食べて、日本でにこにこです。」

不謹慎にもそういう彼、

「私はここでゴードンと暮らしたいから、きっちり出来ることをやって必ず帰ってくるよ。これからも、一緒に乗り越えようね。」

はっという顔をした彼、感動しているのかと思いきや、

「はらへた。(腹減った)」

いきなり階下にだだだっと降りると、「うどん!」と叫びながらいつもの準備。

いいや、今日は。いいや。

おうどんが彼の、その強さの秘密だったら、いいや、どんだけでも食べちゃって。

でも、もうすぐ、おかさんとおとさんと、一緒にあつあつのおうどん食べようね。

大好きな妹たちにも、「ドーナツかったる!」、「(ユニクロ)パンツ買ったる!」って、遊んでもらおうね。

もうすぐ。

そしたら、懐かしい山や海、川に日本の風、その中でまたきっと元気になるから。


待ってて、日本!


余談だが、私のこの話をしたら、「俺は今日も筋肉痛」のポストマンが涙目になって、「これでも食べて元気を出しな。」と、チョコレートバーをくれた。

「これは俺のおやつだけれど、今日は君にあげる。」

いつもタバコをすいながら配達する彼の手から差し出されたそれは、ほんのりタバコの香りがした。

そして、こういう人たちがいる限り、私はイギリスを嫌いにはなれない、憎めないといつも思うのだ。

さて、グラム家、今日もゆっくり前進中です。

みなさまも素敵な秋をお過ごしください。




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夫が泣いた。

2012/07/30 Mon 20:06

オリンピック開幕を迎え、盛り上がるロンドン。
私たちは開幕式を生中継で見ていたが、クイーンが減りから飛び降りた瞬間、「えっ。」、「ダイブした?」

さすが大英帝国である。壁が薄い我が家では、隣の家から「oh my gosh!!!!!」と大爆笑する声が聞こえてきた。「飛んじゃったよ!」、「がははははは!」数ヶ月のベイビーがいる隣人、赤ちゃんも大興奮で「ギャーーー!(大泣き)

つられて私たちも思い切り笑った。

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★お気に入りの帽子ナンデス。


いつからだろう、あんなに寂しかった海外生活だったのに、この国が、この場所が、「家」と思えるようになったのは。

私だけじゃない、夫もそうだ。出会った頃はあんなに寂しく心を閉ざした人であったのに、いつからだろう、優しく笑って、イギリスでも数は少ないが温かな人たちに囲まれるようになった。

そのおかげで、毎日本当にリラックスしている彼、いつ見ても笑っている。微笑むというより、笑っている。

例えば、「おっちゃまちぇよー おちゃおちゃ、おーおちゃ、おっちゃまちぇよー」と延々と不可解な言語で朝からカクカク踊っているので、

「それは何ですか。」と聞いたところ、

「もちんにささげるにほんのうだです。わたし つくった。うだ。すげいよー。」

それは日本語じゃありませんと突っ込みたくなる気持ちを堪えて、ありがとうと返しておく日々。


または、「お茶いりますか。」って聞いてくれたから、「はい、お願いします。」って答えたのに、

「ごしゃくえん!!!」(500円)」って、

君が笑って嬉しそうなのはいいけれどね、うん、嬉しいけれどね、
どこのギャグ、それ!!!

「今日はディスカウントあります。スペシャルのレートです。そして1200円。やすいですよー。」

あがっとるわ!ぼったくりか?

数年前からずっと同じギャグを言っていると思うので、もはや私は彼に相当な借金があることになる。お茶借金、払うものか。

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★近所のラベンダーが綺麗でした。

そんな居心地が良くなってきたイギリス生活でも、それでも日本への夫の思いは別格のようで、「やっぱりクリスマスは日本にどうしても帰りたいんです、おとさんの2段のケーキ食べたいんです、みんなで会うください。わたしとんでいきます。」と未だにぐちぐちと未練じみたことを言っているのだ。

南アでは学校で散々いじめられ、高圧電流の流れる塀に囲まれていた村に住んでいたため、友人が居ても遊びに行くには「両親の車の送り迎え」、それを頼むのが申し訳なくてますます一人で居たという夫だから、南アでの生活に全く未練がないどころか、むしろ思い出したくもないという。スーツケースひとつで初めて国を出るため飛行機に乗ったとき、見送りに来てくれたのは父親だけだったと。

それが、いまや、「ゴードンいつ帰ってくるの!」、「帰ったら焼き鳥食べにいこうね。」、「美味しいチーズケーキ見つけておいたよ、早く食べにおいでよ。」、「秋葉でフィギュアをつれて、カレーを食べにいこうよ。」

毎日のように日本の友人と、こうしてメールやLINEのアプリで話をしているのだ。心は日本に置いてきたというのだ。

実は、先週末などは、あまりに愚痴愚痴言うので大喧嘩に発展してしまった。

「イギリスは雨ばかり、高いし食べ物も美味しくないし、南アの家族が近くに居るのも何だかそわそわする。日本が恋しい。」

しれーとそんなことを言うので、私も怒れてしまった。

「ごーちゃん、私はね、30年日本で生まれて育ったのだよ!もちろん日本が恋しいけれど、それでもイギリスに住まわせてもらって、楽しいこともいっぱいで、不便さも含めてこの国を楽しめるようになってきた。ごーちゃんみたいに英語が母国語じゃないし、ずっと寂しいと思うこともあるよ、でもイギリスのここのお家が私たちのホームなんだからね、日本が恋しいと思うけれど、それでも生きていくって思ってるんだ、ぐちぐち言わずに今の幸せよおおく見つめて、淡々と生きろおおお!」

それからはあーだのこーだの、大喧嘩。そして終いには、

「アンフェアだ!ゴードンはいつも喧嘩のときは英語でしょう?!日本語でそこまで喧嘩できないから、私が英語使うでしょう?アンフェアだ!ゴードンの日本語はまだまだ上手じゃない!」

「も、もちん、しどいです!わたしのにほんごへたくそいいました!うわーーーーん。」

泣かせてしまった。

夫にとって「日本語が完璧に話せない。」というのは、どんな事を責められるよりも「ぐさーーー」と心に突き刺さるらしい。その後数時間、「もちんはばか」、「もちんはしどい。」、「わたしぺらぺらほしいです、でもすまん!」、「にほんじんうまれたかったです、でもあふりかにうまれた、どうして?!」、「びえーーー」と鼻水をだらだら流しながら、ワンワン泣いている夫を見て、やりすぎたあと私も悲しくなってしまった。(ちなみに夫30歳。)しまった、いじめすぎた。

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★心がほっとするということ、初めて知りましたよ。


数日しょぼんとしていた夫だが、記憶が薄れていく速度も私の10倍ほど速いので、ある日そおっと部屋を見て様子を伺ったら、「へへへ、この日本へのチケット安いです。もちん、帰りましょう!」などと、へらへらしているので、古い表現だがその通りずっこけた。

今まで生きてきた中で、あまりにサバイバルで辛い経験が多すぎて、夫の「悩む」神経はもしかして焼ききれているのでは?と思うほどである。

喧嘩をすると体力を消耗するので、ぐたーとしていたのだが、在英5年で不思議な法則を発見した。落ちている時に、誰にも何も言っていないのに、そういうときこそ日本から荷物が届くのである。

「羽二重餅が食べたい。」そう呟いた私のメールを覚えていてくれたのか、友人からはダンボールいっぱいの食品が届いた。みかんがたんまり入るような、大きな箱の中に、いっぱいの和菓子や懐かしいものが詰まっていた。ダンボールにはマジックで「素子愛しとるでね!」と大きく書かれていた。

届けてくれたポストマンのおっちゃんが、「君のところに荷物を届けると筋肉痛になる!」とブラックユーモアたっぷりで嬉しそうに笑っているほど、それは重かった。

ゴードンは口をあんぐり開けてその箱を眺めていたが、それだけでは終わらず、更に数週間後にまた荷物が別の友人から届いた。

「はい、今日も筋肉痛。」

そう言いながら運んでくれるポストマン、それもずっしり重かった。開けると夫の大好きなポッキーや、カレーせんべい、懐かしい日本のお菓子がまるでスーパーごと来てくれたみたいに、いっぱい詰まっていた。

「素子ちゃんが笑顔で暮らせますように、祈ってるよ。」

ゴードンに見せると、「日本の人は、どうしてですか・・・・。」、言葉にならないほどびっくりしているようだった。私の胸もいっぱいで、言葉にならなかったので、二人で何も言えずにただその箱を見つめて涙ぐんでいたのがつい先日。

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★にほんにいくと、いっぱいおみやげもらいますよ。

その後に、家族から更に続けて3箱も薬やら懐かしい食料が届いた。

ポストマンは「俺は本当に、本当に、今日も筋肉痛。」と、玄関先でタバコをすいながら、私が涙目でそれらを受け取るのを優しそうに見てくれていたっけ。しっかりお砂糖2杯にミルクたっぷりの紅茶も飲んでいったけれどね。

「ゴードンへ。」かわいいお手紙が一緒に同封された、彼らの気持ちがいっぱい詰まったそれら、中にはゴードンのための「ポン酢」が入っていた。瓶なのである。重いのである。赤ちゃんが居るのに、物入りだろうに、どんな気持ちで送ってくれたのかと思うとたまらなくありがたかった。

安静にしなければといわれている妊娠中の妹からは、私の命の糧の「高野豆腐」が届いた。彼女のかわいい結婚写真を見て、遠く離れていてごめん、お祝いできなくてごめんとやはり泣いてしまった。

これらが本当に、毎日のように続いたものだから、ゴードンは何だか深く深く考え込んでいるようだった。ふと部屋を覗いたら、真夜中に「日本の文化」という分厚い本を抱えたまま、床に転がって、ひっくり返って寝ていた。

「おきてください、風邪を引きますよ。」

そう揺さぶると、

「まろですか。」

半分寝ぼけながら、おかしなことを言うので、

「はい、まろです、とてもまろです。だから起きてください。」

「それならいいです、まろならいいです。」

ふらふらと起き上がると、ベッドに顔面から倒れこみ、ぐーと寝てしまった。

(まろってなんですか)

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★手作りのケーキももらいますた。

そしてとどめに、母からどえりゃあ(名古屋弁)大きな箱が届いた。ポストマンは、「これは、俺は明日NHSにいかないといけないくらい重い。筋肉痛じゃなくてぎっくり腰だあ!」と言うので、「いつもありがとうね、助かるよ。」とお礼を言ったら、「全部日本からだったね。君にはいい友人や家族がいっぱいいるんだな。日本の人は優しいんだな。送料は、ええと、9400円っていくら?」

「80ポンド位だよ。」

「げっ、まじで?よほど大切なものなんだな?」

「食料品だと思う。おかんからだから。」

「えっ(絶句)」

そして、はあとため息をついたポストマン、「君がここに引っ越してきてから、俺は毎週のように日本からの手紙や荷物を届けたよ。最初はなんだか鬱々とした顔をして、元気がない君を見ていつも心配していたけれどね、今は元気そうに笑うようになったね。支えてくれる人がいっぱいいるんだろうな、君は恵まれてるね。」

「あなたもその一人ですよ、日本の友人家族はもちろん、ここでもたくさん私に元気をくれる人が居ますよ。」

彼はにやっと笑うと、「それでも俺は筋肉痛にぎっくり腰だからね!」と言いながら、タバコをふかしてぶんぶん手を振って去っていった。

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★BRAAIをする時もひとりですから。

その晩、夫に箱を見せた。宛名がゴードンと素子となっていたので、一人で開けるのはもったいない気がした。

「またきたです!」もはや、どうしていいかわからずにオロオロする夫に、「でもね、これはゴードン様と素子へってかいてあるでしょう?」と促して、箱を開けてもらった。

手に持ったときは「ずっしり」来たその荷物だったが、意外と「素子」あてのものは軽かった。どれも私にとってはたまらなく好きなものばかりであるので、おかんありがとうと、涙が止まらなかったが、それでも、「中に漬物石でもはいっているんじゃなかろうか。」と思うほど、箱の半分は軽い乾物であった。

「あれ?」

夫の手がぴたっと止まった。大きな箱に、「ゴードン様へ」とわざわざ指定がされてあった。娘よ、これはゴードンへのものだからね、名前書いておいた位ね、ゴードンのだからね、そんな雰囲気が漂う白い箱を夫が持ち上げて、


「ふえーーーー」

変な声を出した。

「もちん、これ、もちますよ、すごくおもいです、おもすぎます。」

「どれ。」

持ち上げてみた。「う、重い。」

ずっしりと、まさにずっしりと重いその箱、「ゴードン様へ」、夫はすでに真っ赤な顔をしてもじもじしていたが、「あけていいですか。」となきそうな声で言うので、「どうぞ」と促した。

「うわあ・・・すげいよー。」

ぱっと顔を輝かせた夫の目の先に、真っ白なかわいいうどんがぎっしりと箱に詰められていた。1段どころではない、3段になって詰められていた。

夫が崇拝する「うどんのおいしい国」、香川県のおうどんであった。「つくたばしょ、これ香川、香川県って、もちん、かがわ、かがわ!ちずでみるとこんなにかがわ。」

大興奮の夫、「ねえ、ここにも何か入っているよ。」、袋を見つけたので夫に渡すと、夫はますます真っ赤になって黙ってしまった。

そこにはきちんとうどんのスープ、それにゴードンの大すきな名古屋の味噌煮込みのスープも添えられていた。

箱を持ってじいっと手元を見つめていた夫だが、急に「送料 9400円、きゅーせんよんしゃくえん。」と呟くと、だだっと箱を抱えたまま自室にこもってしまった。

あっ、うどん泥棒と思わず追いかけそうになったが、母に電話を入れたかったので夫はほうっておくことにして、受話器を取った。

「もしもし。」

「はい、ん?だれ?だれ?もしもーし。」

娘の声も忘れているおかん、仕方がない。私は大の電話嫌いで、親不孝なことに数ヶ月に一度電話するのがやっとなのだ。「生きとるか!」そう怒った声でおかんが留守電にメッセージを残し、渋々電話をするという、親不孝な勝手な娘である。

「娘の素子ですが。」

「ああ、そうだっけ。」

そんなとぼけた会話も全く変わらなく懐かしい。「おかん、荷物が届いた、ポストマンも今度こそはぎっくり腰になると言っとった、そのくらい重くて、送料見てひっくりかえったわ。本当にありがとう。」

「ああ、重いのはゴードンのうどんでしょう。あの子、うどんうどんっていっつも言ってるからね、送ってやらなきゃと思ってたんだわ。届いてよかったわ、ははは。」

「この前、KちゃんからもTちゃんからも荷物届いた。」


「あれ、そんなら中身全部うどんにしてやればよかったね、娘のはよかったかね。ははは。」

私は何だか、胸がいっぱいになってしまって、何もいえなくなってしまった。母は60歳を過ぎて、未だに働いている。私が小さな頃に父と離婚してから、一切の援助を受けずに女手ひとつで私たち姉妹を育ててくれた。私が初婚した後にようやく再婚した母は、「娘より先にまた結婚するわけにいかないでしょう!」と明るく笑ったが、一本筋が通った立派な優しい人だと涙が出た。

小さな頃は母が家に居ないことを、「寂しい」と思ったことも多かったが、時がたてばそんなことはどうでもいい、パスポートもなく、仕事に追われて海外にすら出たことがない母、私が離婚をしたときも、「周りが何を言おうが、きっと分かり合える日が来る。まっすぐ自分が選んだ道なら、私はいつでもあなたの味方だから、一生懸命生きなさい。」そういってくれた母、

おかん、離れていてごめん、本当にごめん、親不孝で勝手でごめん、なんだか胸が押しつぶされそうな位、うまくいえないけれど、涙がこみ上げてきた。

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★いつか、おかんに、ラベンダー畑を見せてあげたい。

「こっちのことは心配しないでいいから、ゴードンのご両親をしっかり支えなさい。」

ふと、まじめに母がそういうので、「それがさ、ゴードンはクリスマスも日本に帰るってわがままいっとる。日本がいいって駄々こねてるんだわ。」

そう伝えると、「いかん。クリスマスはお母さんと過ごしなさいってゴードンにしっかり伝えて。日本のお母さんの命令ですからって。それより先に帰ってきても、ドーナツもお菓子も買ってあげないっていっとき!」


「・・・おかあさん、ありが・・」

感激して思わずそういいかけたとたん、

「あ!パパが帰ってきた!ちょっとかわるで!」

「えっ・・・」

「もしもし、もしもーし(父)」

「おとうさん?」

「うーん、だれだ?」

「いや、その、娘の素子。」

「ああ!そんなのおったわ!」

全く変わらないのである。照れ屋で、口下手な父、義理の父ではあるがバージンロードも一緒に歩いてくれた、私の大切な父は、

「荷物が届いたんだわ、ありがとう。」

そう涙ぐむ娘に、

「そういえば、昨日テレビで世界一まずい料理の国はどこかって、アンケートやってたぞ。どこだと思う?」

「・・・・・なんか嬉しそうだね。」

「イギリスっていっとったぞ!はははは!」

お礼を言わせてもらう暇もないほど、照れ隠しに、つまらないことを言うのだ。しかも、「風呂に入るから、じゃ。」と、あっさり電話を切られてしまった。

今までもご紹介してきたうちの父、私にとっては義理の父ではあるが、私は世界で一番彼のことを尊敬している。おとうさんと呼べるまで何年もかかってしまったが、彼からは言葉では言い表せない位の幸せをもらった。優しさをもらった。

もっと話していたかったが、「じゃ。」と爽やかに会話が終わってしまったので、
なんじゃそりゃあとぼけーと居間で座り込む私。と、「そうりょう 9400円」、「ぎゃーー!」いきなり夫に後ろから声をかけられて、心臓バクバクした。

夫はそこに、まだ箱を抱えて、さっきまで真っ赤だった顔は何だか白く見えた。

「80ポンドあったら、あのゲームも、このゲームもかえますよ。おかさん、美味しいおすしたべれます。どぢて!!!」

「知らんよ、いま電話したけれど、うどんくらいいつでも送ったるって言ってたよ。」

「おかえしわ」

「いらんよ、二人が元気でにこにこしてたらいいわって。ゴードンがにこにこで美味しいって食べてくれたらいいわって、そうおもっとるよ。」

「ちがい!にほんのひと みな おかえしくれます、わたしもおくる。」

「手紙だけでいいじゃん、ありがとう、おいしかったよ、それが一番嬉しいんだからさ。ゴードンがおいしかったって、それが一番おかんはうれしいんだよ。それにねえ、クリスマスは帰ってくるなって。にほんのおかんの命令だって。ミシェルとすごしてあげなさいって、じゃないとドーナツもお菓子も買ってくれないんだってさ。」

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★かわいいものも みつやりました。お値段あっても かわいいもの。

夫は放心したようにぼけーとそれを聞いていたが、突然何が起こったのか、泣き出してしまった。本当に、子供みたいに泣いた。うわんと泣いた。

「なななな、なんで泣く?!」

「しらん!」

ただただうわんうわん泣いているので、私も慌てて、どこか痛いんじゃないかと心配したり、お腹がすいたのではないかと聞いてみたが、夫は箱を抱えてうずくまって子供のように泣くばかり、私はオロオロしてしまったが、そのうちに大切なタオルも鼻水まみれで、ああっ私のお気に入りのタオルがあ!と怒りもこみ上げるわ、とにかく仕方がないので放って置くしかなかった。そのうちに何だか暇をもてあましてしまい夫のことを取り残し、キッチンでお料理などし始めた私、だってお腹すいたもんね。

「小さなことなんだろうか。」
突然夫がそういうので、「ん?なに?」と言うと、


「小さなことが少しずつ、みんなを優しくにこにこと、温かくしているんだろうか。そういう風に生きていったら、俺の人生も何か変わるんだろうか。」

ものすごくまじめな顔なのである。何か夫の中で、衝撃的に思うことがあったのだろう。

「うーん、そうだねえ。私は少なくても、自分が一人で美味しい大福食べるよりも、半分こして、友達と美味しいねーって食べたほうがうれしいかな。」

「はんぶんこ できない ときわ!」

「その場合は、もらってもらうかなー。自分でどうしても食べたいときは食べちゃうよ。でも、もらってもらうのも、同じ位嬉しいなー。これ差し上げたら、どんな顔しておいしいねっていってくれるかなーとか、そういうのが自分で食べるより嬉しいこともあるよ。いつもじゃないけれどね!私も食べたいしね。」

「そんなしとたち、まわりにいませんでしたから、しりません、にほんの家族だけ、友達だけ、わたしに いろいろ おみやげくれます。うどんはすごくおもいです。いつも いつも むかしむかしから おみやげ とどく。わたしわ おかえし しないで ぜんぶ たべました。わたしわ ばかです、よくないの ひとです。」

あああ、そういうことか。それで自分を責めて部屋にこもったか。

「ゴードンのこと大すきな人は、お返しとか別に気にしてないよ。ゴードンが元気でにこにこしてくれていたらいいなって、それだけ思ってるんだよ。いいじゃん、別に、出来るときにお返しすれば。それに、日本の人だけじゃないよ、優しい人はいっぱい居るよ。お友達のあの人も、日本人じゃないけれどいつもいっぱい良くしてくれるでしょう?」

「それはおくさんにほんじんだから、かれもいいしと、やさし!」

「あー、ぜんぜん違う、日本人とかそういうの関係ないの!同僚のJはイギリス人で、奥さんフランス人だけれど、ワイン1ケースフランスから抱えてきてくれたでしょう?ボスはいつもお土産くれるでしょう?」

「それわ わたしありません、もちんのことみんな すきです、もちんはみんなにおみやげきちんとします、にほんから ホリデーから、いつもいつも むかしむかしから おみやげかいました。わたし しませんでした。みんな日本が好きになった、もちんのこといつも にほんのしとはやさしいといてる、Jはもすぐにほんにいくです、おくさんとずっとにほん大好きになったからって、もちんがむかしむかしからやさしから わたしじゃ ありませんから!」

そして、

「いやだ、わあしわ いちばん ばかです、いやだ!」

どんどん落ち込んでしまう夫、もう何を言っても仕方がないので、更に放置を決め込むことに。しかし、ずずずずと私の使っていたキッチンに割り込むと、「わたし うどん ゆでる。」

おかんがくれたおうどんを手際よく沸騰したお湯にいれると、「にこにこ れしぴがありますから、それみてつくる」

箱に入っていたレシピを真剣によみつつ、「ねぎ いれる。ねぎない。ごまいれる、ごまあります。たまごいれる、たまごイギリスの危ないですから生はやめる。おしょうゆいれる、おしょうゆ私この前かってきた。まいどありがとござますのおみせでかったのある。」

ぶつぶつぶつぶつ真っ赤な目でうどんを茹でる彼、あれ、どうやらいつもより多くないか?そう聞くと、

「もちんのぶんのゆでます」

「あら、今日は優しいのねえ。いつもは自分の分だけ茹でて、こっそり食べちゃうくせに。」

「おかさんもちんのおかさんだから、もちんがたべたらうれしいですよ!。わたし ばかじゃ ありません。」

「ゴードン様って書いてあったよ。そういうのはゴードンのものなんじゃないの?」

「ちがい。これわ、おともだちにもあげます。にほんのおともだちもうどん好きです。あしたもてきます。あっおゆがぶくってなる、もちんがうるさいからうどんがまろになります、やめて」

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★まろのうどんですか。

まろになったうどんでもいい。そうか、優しくなったね、またずっと昨日より、優しくなった君、

優しい人の周りには優しい人が集まる。お友達の家で、美味しいおでんをご馳走になって、貴重な和食材を惜しげもなくご馳走してくれる心の温かい友人にイギリスでめぐり合えたのも、全て、ゴードンが優しい心をはぐくんでるからなんだけれどね。

自分ではなかなか気がつかないよね。私はしっかり、ここで、あなたのそういう変化を嬉しく見守っていくからね。大喧嘩もするし、お互い酷いこともいっぱい言うけれど、それでもおかんが教えてくれたみたいに、お友達が家族が教えてくれたように、ここでしっかり生きていくでね。毎日ニコニコで、イギリス人のユーモアに爆笑しながら、助けてもらいながら、無理しないでふつーに生きていくから。

「できますた!」

夫が作ってくれたうどんはとても美味しかった。熱々が好きだから、お水できりっとしめることを何度教えても「もったいない」とやらない、適当なうどん職人きどりなのだが、それでもとても美味しかった。

おかん、ありがとう。みんな、ありがとう。ゴードンへの気持ちは何倍にもなって、大きな元気だまで日本からびゅんって届いとるよ。

次に会うときは、もっとぼけーとしたゴードンの顔が見られると思うから、それまでみんなも元気で居てね。
ゴードンがオリンピック観戦で日本の女子バレーを応援するって張り切ってるからね、阪神タイガースかモンハンのTシャツを着て、日本の旗を持って応援に行くって。いや、なんだか、Tシャツは全くバレーに関係ない気もするけれど、精一杯応援してくるね!

ロンドンから、今日も、私たちはもりもり元気です!皆さんもお元気で!




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イギリス・日常 | コメント(41) | トラックバック(1)

クリスマスはこうします。

2012/06/27 Wed 22:17

前回の日記で南アの家族がイギリス(我が家から徒歩10分圏内)に引っ越してきたとご紹介したが、よほど嬉しいのではと思っていたら、夫にとっては未だに「もちゃもちゃ」気分、複雑な心境らしい。

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★飲んで帰ってきたら、夫が犬のように待ってました。酔いがさめました。

大好きなのである、もちろん家族だもん。だけれど、17歳で一人で南アを出て日本の家族や友人に出会うようになるまで、ほぼ誰からもサポートを受けていなかった彼、私が初めて出会った頃はかなり「頑な」な人だった。すごく寂しい人だったと思う。

私はいつもここで「ホームシックだ」、「和食が食べたい」とぶーぶーいっているがそばにはいつも夫がいる。勝手に人のうどんを食べてしまう夫ではあるが、体調などが辛いときには「こってり」、「激カラ」でも、一応ご飯を作ってくれる人がいる。たとえベッドでうんうん唸りながら、「はっ、それは私の七味では、ゆずこしょうではないか?そんなにたんまり、ご飯の上に大盛りサービスしないで、むしろ勝手に使わないで!」と思ったとしても。

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★うどんは手打ちを勉強するデスよ。もちんが食べないでと怒りますから。

それが17歳までたった9軒しかない村に暮らし、周りは高電圧の柵と塀に囲まれ、どこにいくのも父親の車で送り迎えしてもらっていた彼が、いきなり初めての飛行機で南アからオランダに移り住んだのだ。バスも電車にも乗ったことがない人だった。どんなに怖かっただろうか。

初めて着いたオランダの空港では、従兄弟が待っていてくれた。彼の紹介で、コンピューターを修理する仕事を手伝っていたという3ヶ月。オランダ語がちっとも分からずに、それでも初めて目にするトラムや電車に大感激して、「す、すごい!トラムに人が乗ってる!」とぎゃーぎゃー駆け寄った彼に、「あほか、人が乗らなきゃ何が乗るんだ?」と冷静に突っ込んだ従兄弟。

その後イギリスにいる夫の知り合いから「もっといい仕事があるから。」と声をかけられイギリスに渡るものも、着いたWATERLOO駅にその知り合いの姿はなかったという。電話もつながらず、駅で3時間ほどずっと立ち尽くしていた夫だが、どうしてよいか分からずそのまま駅の構内でかばんを抱えて寝たのだ。

この話を聞くと、いつかその知り合いにあうことがあるのなら、ほっぺたをひっぱたいてやりたいと悲しくなる私だが、夫は言う。「もう、いんですよ。」

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★寂しかったことも、もういいですよ。

その後一人でいた約7年間、どうやってイギリスで生き延びてきたか、ひっくり返るほどのサバイバル体験ばかりで本当にため息が出てしまう。なるほど、出会った頃の険しさや寂しさは育った南アの環境だけでなくそこからも来ていたのかと頷いてしまったが、その夫も今は「ほけーーーー」と笑うのだ。友人や家族にいたずらメールを送ったり、(迷惑)LINEというアプリでお花のシールを贈ったり、手を振ったりするのだ。

思えば最初に日本に帰ったときに、友人が駅に見送りにきてくれた。彼はいっぱいのゴードンの大すきなお菓子を「はい、これ!」とお土産にくれて、大感激したゴードンは「日本人みたいに親切になりたいんです。」と、友人がトイレに行っている間に駅の構内で可愛らしいお菓子を買った。プレゼントしたかった。お返ししたかったのだ。

「これ、おみやげのおみやげです。」とゴードンが彼に出発間際にそれを渡すと、彼は「あ、ありがとう、ありがとう!」と大事そうにそれを抱え、次の瞬間忍者並みのスピードでどこかへいってしまった。

あれ?またトイレか?と不思議に思う私たち、もう出発時間も迫っている。そこにぜーぜー言いながら現れた彼の手には、新たな手提げ袋が。「ゴードン、これ電車で食べて!あとこれ、もっちゃんにも!」

甘くて美味しそうな名古屋コーチンのプリンだった。味噌煮込みうどんときしめんが、彼の慌てた様子を示すように突っ込まれていた。

「も、もちん、おみやげのおみやげもらいますた、どしようか!おみやげのおみやげのおみやげわ!!」

「もう、いいから!」

アワアワする彼の手を取って、「ありがと、また帰ってくるからね!」と友人に手を振り、私たちは新幹線の改札を駆け抜けた。夫は「おみやげのおみやげの・・・」としつこく後ろを振り返っていたので、せっかくのプリンがさかさまになってしまいそうなほどのアンバランス、しかも最後にその手提げ袋を持った手で慌てて手を振ろうとするものだから、「待てい!」とそれを引ったくり、プラットフォームへ夫を引きずった。

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★とんかつ、とんかつ、恋しいです。

新幹線に乗り込みほっと一息つくと、夫はまだ放心したようにこういった。

「また、おかえしできませんでした。またもらいました。忍者みたいにはやくてわたしはあふりかじんだからおそいです、もちんごめんなさい。」

いや、そうじゃないんだよ、いいんだよ、友人はゴードンのことが大好きだから「喜んでもらいたいな。」って思ってくれてるんだからね、おみやげのおみやげのおみやげは次に会うときまでとっておきなよ。

「だめだがん!にほんのひと みんなやさし。次にあったらぜったいにまたおみやげあります!そして、もし、わたしがおかえしします、またおみやげくれます。あ!ロンドンにもおくってくれます。モンハンTシャツとか、おおさまの本とか、ポッキーとか、きょろちゃんとか、かりーせんべいとか、いっぱいいいい。」


そうか、それなら、プリンは私が全部食べるからね、そう私が言うと、

「やだ」


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★そうだよね、本当にいつもいっぱいいっぱい、みんなありがとう。


本当に、うちの家族や友人は、呆れるほどにお人よしで優しいと思う。情にとてももろく、心がふっくら厚いと思う。そんな中で私のような突然変異が生まれたのはなぜかと思うが、わがままに自分勝手に生きている分はしっかり自分に帰ってくるようで、

同じ一時帰国の際、うっかり失効の運転免許を更新に行った時の事。正月明けで朝一番に出かけたものの、免許センターでのバスも渋滞、センターに着けば大行列で、予定していたよりすっかり時間を食ってしまった。

「ぐー」と気持ちよくふかふかの布団で寝ていたゴードンを、妹の家においてきてしまったことが気になった。今頃飢えているんじゃないか?一人で寂しがっていないか?不安になってそわそわしていたが、母にテキストをしてみたところ、ひっくり返ってしまった。

「今ゴードンとおばあちゃんとみんなでおすし屋さんに向かっています。何時ごろこれますか。」

えええええ。

娘、のけ者、決定。

「そんなこといってもすごく混んでるよ!いけないと思う。2時とかになっちゃう。」

「うっかり失効したあなたが悪いです。それじゃあ、ゴードンとみんなでお寿司を食べてきます。終わったら教えて、そんなに急がなくてもいいから。ばーい。」

・・・・

・・・・

うわああああ!!ひどい!

っていうか、なんで、ゴードンが「ばあちゃんとかあちゃんと」寿司食べるって?どういう展開でそうなってるんだ?

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★おもちゃあずかってもらったりとかね。きみね、本当にね。

結局「お寿司・・・」と脱力した私がみんなに合流したのは3時前、それも、最寄り駅まで迎えにきてくれた母の車の助手席には、嬉しそうにニコニコしたゴードンが「いえーい」と甘いもの抱えてちょこんと乗ってるし、私すっかり「疎外感」。君、その車にぜんぜん似合っていない、背がでかすぎるんじゃ!

「そこ私の席!いやだ!」

むがむが焼きもち焼くが、相変わらずにっこにこで母に買ってもらったあめちゃんを舐めるゴードン、すごすご後ろの席に乗り込む私にこういった。

「ひらめ、おいしいですねー。」

なんですと?

「ちゅう とろ も おいし、まろまろの ふわふわの えびも おいしですよ!えへーー。」

「あっ、のどぐろ いいですねー。」

だ、誰がそんなこと教えたああ!!!

第一、君は関空から京都についた時点では、まだ「さばおくん」ではなかったか?2年ぶりの日本で寿司屋に駆け込んで、大すきなしめ鯖を大将さんに「さば、ください、さば、おねがいします。」と4回以上も頼んだせいで、「あっはっは、お兄さんはさばおくんだねー。」と、周りのお客さんも思わず噴出してしまう中で命名してもらったはずだよね?

思わず母をにらむと、「納豆も食べて見せてくれたわよ。何食べるっていったら、納豆って意気込んでたわよ。無理しなくていいって思ったけれど、あまりに得意げなので、見せてもらったわ。お店の人にも頑張って見せていたわ。みんながすごいねーって言ってくれるから、嬉しそうに食べてたけれど。本当にすきなのかしら?」

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★姪も甥もいっしょにきてくれますた。

夫は完全に母の助手席でダラーとリラックスしながら、「はい!おいしかた!あと、肉のおばあさん、おもしろいです。おすしやさんつきました。そして ここはだれが はらいますか ききました。おかさんがはらうっていうと、ひらめ、トロ、うに、いくら、ぼたんえび、のどぐろ、てっさ、あと焼酎2はいって すぐたのみました。」

ばあさんよ。。。

「そして焼酎1つ、わたしにくれました。オイスターのフライも頼んでくれました。しめさばも3つも食べました。初めてオイスターフライたべました、ふぐもかにもたべました、すんげいよー。」

げっ。

ゴードン、オイスターなんて私に会うまで、いや会ってからも絶対に食べなかったよね?おなかが痛くなるといやだって、無理やり私がロンドンのオイスターバーに連れて行くまでは、一切食べなかったじゃん!

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★アフターヌーンティだって、いやだ!といい続けて5年間。

それ以前に、いや、魚介類すら食べなかったよね?好物は某ハンガーがーチェーンのチキンバーガーと、チョコレートとアイスクリームじゃなかったのか?

南アから出てきて、ずっと苦労して、パスタのゆで方すら知らなかったきみは、「いっぱい茹でるとパスタのかさが増える!」って、大喜びしてたでしょう?一般的にグルメな日本人の私がアルデンテ茹でたら、「いかん!もっとぼとぼとにしないと、かさが増えない!」って大慌てしてたじゃないか?

それに市販のソースを水増ししてかけていた君はどこいったああ!ああ、たまにはツナ缶を半分に割って、そのままぶっかけてたよね。塩とね。

日本に初めて友達と旅行した7年前、フードコートのオムライスとラーメンと餃子とカレーに「こ、こんな美味しいものがあったとは。」って感動してたっていったじゃん。それが、「ひらめ」って、「トロ」って、

家族甘やかしすぎ!!

優しいばあちゃんのことだから、ゴードンが払うのではと気にして母に「誰が払うのか?」と聞いたに決まっているのだ。ゴードンはそれを「おかさんがはらうから、おばさんいっぱいたのみますた。おもしろです、へへー」と嬉しがっているのだ。まだまだちっとも分かっていないな、そこのへらへらの人。君のためだよ!

むしろね、うちのばあちゃんは、ちまっと刺身とお酒があればいい人なのだよ。トロなんてもう好まない80過ぎてる人、カキフライだってね、揚げ物は苦手なんだからね。

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★クリームティは大好きですよ。

その晩は更に家族にてんぷら食べさせてもらって、更に更に妹とその彼に居酒屋で2次会(いや、君は3次会だっ)してもらって、パステルのプリンを美味しそうに「食べたいんです」って眺めていたら、お土産にどっさりもたせてもらって、あああ、もう、唇の端っこにクリームついてる子供だよ。

日本ではこんなに「だらーーー」としながら、いっぱいの愛情や友情を受けてね、足が地に着くどころか、その辺羽が生えて飛び回ってる位のリラックス振りなのに、なぜ、なぜ、南アの家族にはそんなに緊張してるのか?

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★南アのお菓子は袋に首突っ込んじゃうほど好きですよ。

そうなのだ、話を戻せば、ゴードンの南アの家族への緊張振りが半端なくて困っている。
電話やメールが来ると「どうしよう。どうしよう。」っておろおろしてるし、おかげで義母は私に「うちの息子は生きてるか」としょっちゅう連絡してくる。

「会いにいこうよ。」
そう促しても、「○△○×うにゃうにゃ」
真っ赤になって黙ってしまうのだ。

数日前には義母の誕生日であったので、私はレストランを予約し、ケーキも用意して、花束も発注し、プレゼントだけは二人で選びたかったので、「買い物にいくよ!」と声をかけた。

もごもごいいながらついてきた彼、売り場に着くなり真っ先に目に留まった香水のセットを指差して、「これにする」

その間0.5秒ほど

しかもブランドは「カルバン・クライン」(メンズライン)

「ごーちゃん、真剣に選びなよ、それ男の人のやつ!」

「しらん!わたし、おかさんはなれてました、南アにプレゼントおくれません、ゆうびんやさんありません、私の村、ゆうびんやさんきません。それに、おかさんが何すき、きらい、ぜんぜんわからん!にほんの かぞく いつもわたしに しんせつです。手紙、めーる、いっぱいくれます。私のかぞく ぜんぜん はなしません。わたしの たんじょうびも わすれました。しらん!」

真っ赤になってうつむいてしまった。

「それに、お金がなくておくりたくてもおくれなかった。毎日一食しか食べれない頃で、そしたら、息子は母親を忘れたってすっごく責められたことがあった。今更どうしていいかわからないんだよ。」

「ごーちゃん、でもさ、与えてもらったからお返しするって言うんじゃないと思うよ、自分がさせてもらって嬉しいって思うからじゃないかなあ、日本のみんなは本当にそう思ってるよ。」

「そんな風に分け合ってくれるのは日本の人だけだよ、少なくても俺の家族は違う!!」

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★コーンウォールの海は南アの海を思い出させました。

私はいつも、人には人それぞれの思いがあるということを無視して、こうして突っ走りながら自分の正義を押し付けて傷つけてしまう。

そんな能天気なものではなかった、夫はすごく長い間、とても一人だったのだから。

お金がなくてドミトリーの雑魚寝で日々暮らしていたころも、「ロンドンに行ったのだから、お金があるはずよね。妹に自転車を買ってあげて頂戴。」といわれて、出来ない自分をもどかしく、悲しく思ったこと、自分が一日一食マックのハンバーガーだけで暮らしていることを両親に打ち明けられなくて、いつもおなかがすいて惨めだったこと、帰りたくてもチケットが買えずに「ちっとも顔を見せない」と怒られたこと、全ていろいろなことが彼の中でまだ溶けていないのだ。

日本の家族に頑なな心は溶かしてもらったが、そこだけは、彼が自分で解決していかなければいけないのに。時間がかかることだったのに、私は勝手に押し付けてしまっていた。

あまりにリラックスした彼の笑顔を、日本で、ここで、最近は毎日見ていたから。

「そっか、じゃあ、無理しなくていいよ。それならプレゼントも私が選ぶからね。いいからね。ごーちゃんは前からお話してた、日本のお友達へのお誕生日プレゼントをみてきてね。」


そういいつつ彼を残し、一人で化粧品売り場をうろついて、なんだか悲しくなった。

私の周りの人があまりに優しく温かいものだから、傷ついたことよりも温かな思いを受けた事のほうがずっと蓄積されている私、もしかしてゴードンにはまだ心にいっぱい穴ぼこがあいているのだろうか。

「もちん。」

ふとゴードンに呼ばれた。

「ひっ」

思わず後ろに3歩以上下がってしまった。

彼の両手に、おおきな熊がぶら下がっていた。いや、熊のぬいぐるみ、それも片方はユニオンジャック柄の服を着て、もう片方はシャーロックホームズのコスプレをしていた。

「おかさんとおともだち、これします。おかさんはシャーロックホームズ好きです。おともだちはおもしろいんですから、これにする。」

全長40センチ位もあるそのぬいぐるみ達は、とても可愛らしい顔をして、優しそうな子だったが、真っ赤な顔の夫の両脇にがっちりと抱えられ、少し迷惑そうでもあった。

それでも私は、なんだか胸がじーんとなってしまった。やっぱり穴ぼこは確実に、少しずつ埋まっているのだと、涙が出てきてしまった。きっと必死に選んだのだろう。かわいい熊を二頭も抱えて、真っ赤になっている夫の頭を抱きしめてやりたいと思った。

人に優しくしなきゃっていっても、受けたことがなければ分からないはず。夫は温かな思いをいっぱい受けて、今もゆっくり成長しているんだ。ゆっくりでいい、いつか色々なものが溶けて、彼も楽になれるはず。

「ええと、かわいいです。いいと思う。でも、日本に40センチの熊は送れないから、お母さんだけにしましょう。」

「ぶーーー」

一緒に一頭の熊を売り場に戻しにいった。義母もこれをもらってさぞかし困るのではと思ったが、今回ばかりはいいやと思った。40センチの熊、息子の愛情を受け取ってもらわなきゃ、そう思った。

お誕生日の当日、ケーキを取りに行き、花束も用意し、熊もレストランに連れていた。席がひとつ余っていたので、そこにおおきなリボンをつけて座らせておいた。

少し遅れて到着した義母は、夫がお花を渡すと涙ぐんでしまった。そして、おおきな熊を渡すと、泣きながら笑い転げた。「オー、ディア!なんてかわいいの!」

義父と義理の妹、義母とゴードンと私、そして熊(シャーロック)で13年ぶりに一緒に彼女のお誕生日をお祝いしたゴードン、帰り際にはきちんと、「Mum,I love you.」って言っていた。

涙が止まらない義母は、ゴードンより少し後を私と歩きながら、「家族は私の全てなのよ、17歳であの子を見送ったとき、本当に辛かった。昔のゴードンは全く人を受け付けない子で、学校でもいじめられてばかりだったの。それが、あんな風に笑うようになるなんて。何もかにもリラックスして嬉しそうで幸せそうで、あなたと日本のご家族、日本とイギリスのお友達のおかげね。本当にありがとう。」そう言ってくれた。

家に帰ったゴードンは、あまったケーキに「ぐわわわわ」と飛びついた。切り分けることもしないで、そのまま残ったホールでかぶりついた。レストランでは「けっこうです。」ってかしこまってたくせに!

「なんだ、食べたかったのね!うははは、やっぱりお母さんの前だと恥ずかしいんだ!」
「しらん!もちんは うるさい!」

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★恋しい日本です。

おかあさん嬉しそうだったね、そういうと、「ふん」という顔でもくもくケーキを食べた君、野蛮人でマナーがないべったべたの手も、クリームがついたほっぺも、汚しまくってくれた机も、今日はいいや、許す!

でもいつか、日本で平気でもぐもぐなんでも食べられるように、お母さんの前でも無理しないで食べれる日が来るといいね。うちのおかんが「どのドーナツがいい?」って聞いたとき、そういえば最初は「けけけけ、けっこうです!」って遠慮してたものね。

優しい思いは世界をめぐって、寂しいあの子や、悲しい人の心を溶かしてくれる。全く関係がないって思われる場所でも、誰かの温かさのおかげで笑っている人たちがいる、そのことを私は良く知っている。

最後に、夫はこういった。「クリスマスはここで過ごす。そして、プレゼントをあけたらすぐに飛行機に乗る。そんで日本に行く、これ以上は譲れない!」

あら、やっぱり穴ぼこ埋まっているみたいです。みんなのおかげ、本当にありがとう。これからの夫が更にどう変わっていくのか、私もとても楽しみ。

それでは、日本の皆さんお元気で。




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